あらかじめ失われた恋人たちよ

1971年のATG映画、モノクロ。 ものすごく60年代後半〜70年代前半の空気に満ちていて、映画そのものの出来栄え以前に(少なくとも傑作とは言いがたい)資料的価値が高いのではないかと思ったり思わなかったり。

バンドであったりアジだったり革命の落書きだったり、そもそも放浪だし。

兎にも角にも石橋蓮司がすごい。 飄々としながらも基本的にしゃべくりまくり。 後半は役のそれで喋らなくなるけど、飄々さはわざわざ残して見せちゃったりして。 でも基本的には異様なくらいにしゃべくりまくり。 きっとその落差を見せつけようとしてるんでしょう。 石橋蓮司だから成立したようなもんだ。 台詞の殆どが観念論で・・・要するに左翼っぽくて・・・舞台芝居っぽいところも見受けられるのは芝居出故の部分があるのでしょうけれど、それが返ってこの作品をこの作品たらしめているんですよね。

出演者が妙に妙で、カルメン・マキがほんの一瞬(1シーン)出てきたり、緑魔子が「これ以上ない」ってくらいに緑魔子パワー全開の役柄で出てきたり、自衛団(?)のなかに蟹江敬三が出てきたり。

明らかに異質なものを映画にとり込もうとする実験的要素も強く、唐突にインタビューシーンがあったりするんですよね。 そういえばアジるところも何故か長くて、あれも異様っていえば異様かもなぁ。

北陸の白く乾いた田舎町を気ままに旅する青年。彼はかつてオリンピック候補の棒高跳びの選手だったが断念、いまやかっ払い強盗という荒唐無稽な青年だ。ある町で青年は、聴覚障害を持つ若いカップルに遭遇する。その二人の交わす官能的な手話と互いの身体を触れ合わせる独特な愛撫に魅了された青年は二人から離れられなくなり、次第に自分のしゃべる言葉がむなしく空虚なものに感じられるようになっていく。ある日、この聾唖者の女が町の若者たちにさらわれ強姦される。翌朝、聾唖者の男と青年は女を犯した若者たちをナイフで次々と刺し報復するのだった…。 共に岩波映画出身、劇作家の清水邦夫と、当時気鋭のテレビディレクターとして知られていた田原総一朗による傑作青春ロードムービー。演劇で言葉の壁にぶつかったという清水と、若者たちから画一化された青春を追放したかったという田原のまさに青春宣言。「現代は饒舌の時代だが、背後にあるやりきれない魂の空白を描く」という意図で製作された。桃井かおりの本格的映画デビュー作であり、田原総一朗唯一の監督作品。
共に岩波映画出身、劇作家の清水邦夫と、当時気鋭のテレビディレクターとして知られていた田原総一朗による傑作青春ロードムービー。演劇で言葉の壁にぶつかったという清水と、若者たちから画一化された青春を追放したかったという田原のまさに青春宣言。「現代は饒舌の時代だが、背後にあるやりきれない魂の空白を描く」という意図で製作された。桃井かおりの本格的映画デビュー作であり、田原総一朗唯一の監督作品。