A Viagem Das Horas (José Mauro)

またまた FAR OUT がやってくれた! ブラジル・サイケフォークのカルト的アーティスト、ジョゼ・マウロが残したコレクター垂涎の幻盤『A VIAGEM DAS HORAS』が待望の世界初 CD/LP 復刻。なんと本来収録されるはずだったという未発表3曲を収録してのリリースです。
録音は当時最高峰の ODEON スタジオで行われ、FORMA や QUARTIN といった伝説的なレーベルを手掛けたブラジル屈指の名匠ホベルト・クアルチンがプロデュースを、のちにジャーナリストとしても活躍したアナ・マリア・バイアーナが作詞を、ブラジル音楽黄金期を支えたリンドルフォ・ガヤがアレンジを担当。西アフリカの宗教とカトリックのシンクレティズムであるカンドンブレの世界観をベースにしたサイケデリックなフォークロックと、シネマティックなオーケストレーション、パウロ・モウラ、ウィルソン・ダス・ネヴィス、ドン・サルヴァドール、イヴァン・コンチら当時最高峰のミュージシャンによる演奏が混然一体となったその内容は、アルトゥール・ヴェロカイやエドゥ・ロボが残した 70 年代の名作群に匹敵するもの。しかしその素晴らしい内容に関わらず、当時本作を手掛けた TAPECAR レーベルは、すでにリリースされていたジョゼ・マウロの 1ST アルバム『OBNOXIUS』(QUARTIN/1970) に収録された楽曲のいくつかを使いまわし再度収録。当時のことを知る関係者もおらず、長年謎多きアルバムとして認知されてきた。
時は流れ 2016年、FAR OUT が先述の『OBNOXIUS』を復刻した後に、鬼籍に入っていると長年信じられていたジョゼ・マウロが実はリオ郊外でひっそりと暮らしているという噂が FAR OUT のもとに届いた。FAR OUT チームはすぐにリオに渡り本人に接触し、本来であれば当時収録されるはずだったという未発表曲3曲を提供してもらうことに成功。重複していた楽曲を除きその3曲を加えるとことで、ジョゼやクアルチンがもともと描いていた「オリジナル」のかたちとなった。

思わず長々と引用してしまったけれど、この 2nd の内容も良ければ、いやいや 1st もいいし、なんなら 2 in 1 とかあればいいのに絶対にいいのに!!とかすごく勝手に盛り上がってしまったりなのは、要するに José Mauro というアーティストがすごいって話なんではあります。

ブラジリアン・サイケフォーク、ということで、たしかにそう。 フォークでありサイケであっても、そこにサンバがあるから通り一遍に終わらず、底辺にブラジルの混沌とした音楽ジャンルが組んずほぐれず横たわっていますんで、もう全然一筋縄ではいかない。 なのに終始メランコリックではあるので、もう、こう、表現のたいへんにしづらい音楽だとはいえます。

ちなみに 2nd のアルバムジャケットは、オリジナルはこういう 1st っぽいものではなくて、黒縁に写真(しかも左右反転)というもの。 1st のリリース元であった Quartin の意匠を経ているものなのではありますけれども、いかんせん 1st の再発盤も同じ円の向きであったりで残念無念。

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