大脱獄

高倉健が極限に生きる死刑囚に扮し、北海道長期ロケの壮大なスケールで描かれる。殺人犯のぬれ衣を着せられた死刑囚が復讐の鬼と化し、網走刑務所を脱獄。同じ死刑囚との友情、旅のダンサーとの束の間の恋、そして雪の原野での真犯人との死闘へとドラマチックに展開する。主演の高倉と渡哲也、菅原文太のビッグスリー初共演。脚本・監督は石井輝男。

残念ながら狂犬渡哲也さんは出演していない悪しからず。 ドラマチックな展開もないので悪しからず。 とにかくご都合主義的な作品で、場当たり展開のオンパレードであります。 なかなかソフト化されなかったとの事ですけどむべなるかな。 だってこれよりも先にソフト化する作品はあるだろうって。 これは最後の最後でいいよねっていうくらい、豪華な出演陣ながらも思い切った「殺し方」で退場させてしまうんですよ。 最初の30分くらいであらかた死んじゃうんですってば!

特に菅原文太は問題ありで、こすっからしくて、「ワイはなんでも半分や!」とかぬかしてるから山小屋だかで鍋でどつかれて殺されちゃう。 もう丁々発止がコント仕立てでありまして。 でも場当たり主義作品なんで、文太は復活するんだ。 最後は正式に死んじゃうんですけどね。 もう誰が死んでも構わねッス、気にしないッス、って気持ちにさせられるんです。 いたたまれねぇんだよぅ。

そもそも、人は殺してません!って裁判で証言してるのに、騙した田中邦衛に復讐するべく、脱獄後にはじゃんじゃん人殺ししてるのが高倉健なんですよ。 そんな高倉健主演映画なんですから。 なんでもいいんかい!って。

そして中盤以降も微妙に人の出入りがありまして、特筆すべきは小池朝雄先生(コロンボ)。 高倉健と木の実ナナ(お腹痛い人)が潜伏している民宿に出会わせて、脱獄犯はこちらでぇす的な一面扱いをしている新聞を手にしてつきあわせながら、「・・・しっかりやんなさい」なんて言っちゃうの。 そして次のシーンでは民宿を包囲した警察に連行されちゃう始末。 どういうことなんだと、小池先生は小池先生で別に容疑がかけられてて、その線で逮捕されたってんですけど、すごいつじつま合わせ感が濃くて、おなら出ちゃうよこっちとしては、だ。

まじめに観てたらこの不条理感に頭がおかしくなっちゃうよ、って話です。

ただ、ご都合主義的なストーリーではありますけど、テンポはやたらといいのであっという間に観られるのはすごい、といえばすごい・・・と申し上げておきましょうか。 キャストはもうほんとに豪華でね、それを観るだけでも価値がある作品なのではありました。