バージンブルース

ジンジンジンジン血がジンジン♪っていう曲を「戸川純ですね!?」って聞いてくる人だって今や疎らだっていうところなれど、野坂昭如だっていうのを知らない人とどっちが多いか少ないか、どちらかっていうとどうでもいいんではありますけれど。

序盤、四谷っていう設定だったけど防犯の看板には「代々木署」って書いてあったりでアレなんですが、当時(1974年)の東京が垣間見られてマニアとしては嬉しい作品。 1974年っていうとアカネが産まれた年でもありまして、一層感慨深いものがありますです。 昔は東京もあんな風に垢抜けていなかったんですよね。 スーパーなんかもそんなにスーパーじゃなかったりとかね。 それと、脱サラした平田の(実質奥さんが切り盛りしている)店が「熊ぼっこ」っていうのも、今考えてみるとすごい事だと思うけど、あぁいうのは狙ってるんだろうか。

秋吉久美子を目当てに見たんです。 が意外に清水理絵も良かったりと目移りしちゃう映画ではありまして、なんか清水理絵が座敷牢に入れられたり逮捕されて警察署まで連れていかれたり、走り回されちゃったりと主役を食う勢いなんではありましたけど、どっこい秋吉久美子には敵わなかったっていう。 あのどうしようもない嫌世っぽさというか掴み所の無さはどうでしょう。 あぁいうのが男を狂わせちゃうんですよね。 この映画でも平田がまんまと一線を踏み外し、踏み外しついでにプチ崖から落っこちちゃうとかしています。

崖から落ちちゃうのは単にバカなだけだとは思うんですけど、蒸発寸前の男の手持ち金が少なくなってゆき、とうとう預金残高がゼロになってしまうあたりの焦燥感とか、うまく表現してるんじゃないかなぁって思いました。 すごい悲惨だけどそんなにドラマティックじゃない、現実は淡々と過ぎていく。 そんな空気が出ていると思うんですよね。 「ただいま電子計算機と更新中です」っていう表示がやけに長いのとか、あぁいいなぁって思っちゃって。

・・・藤田敏八監督作品なんだなぁ。

万引きに失敗した予備校生・畑まみ(秋吉久美子)は、中年男の平田洋一郎(長門裕之)に声をかけられる。平田はまみとその友人・ちあき(清水理絵)をラブホテルに誘うが、バージンであるまみが痛がって性交は未遂に終わる。やがてまみとちあきは故郷・岡山に帰ろうとするのだが、平田がふたりに同行。ちあきと別れたまみと平田は、アングラ劇団で合宿生活を送ることになる…。
藤田敏八監督と秋吉久美子による青春映画第3弾。少女と中年男がさまよい歩く、ロードムービー的構造となっているのだが、今ひとつ焦点の定まらないストーリーが難点。放浪を続ける秋吉と長門裕之の中年男のちぐはぐな関係がユニークで、そのいでたちが時代を感じさせる長門の「俺にはバージンを守る義務があるんだ!」との叫びはもの悲しい力強さを感じさせる。本作のモチーフとなったのは野坂昭如の異色歌謡曲「バージンブルース」。その強烈な歌詞と野坂の木訥な歌唱は忘れがたいほどのインパクト。

「バージンであるまみが痛がって性交は未遂に終わる。」って、そんなシーン無かったと思うけど(見たくもないし)