A Saucerful of Secrets (Pink Floyd)

今作は1968年作品。シド・バレットがドラッグの過剰摂取によって精神が不安定な状態へと陥り脱退へと向かい、新たなギタリストとしてデヴィッド・ギルモアが迎えられるなど激動のなか制作された2作目。コズミックなサイケデリック・サウンドに彩られ、ウィリアム・バロウズの小説にインスパイアされた「太陽賛歌」や12分にも及ぶ4部構成からなる表題曲など、この時期のステージにおけるハイライトにもなった名曲が生まれた。アルバムの制作途中でバレットを失ったバンドにとって、その後の4人体制に向けてのスタート地点ともなった重要作。

このバンドがプログレだプログレだ言われるのを耳にする度に違和感を感じていたのは何故か、と 1st を聴きながら疑問に思うのはまったく筋違いかもしれない。

Syd Barrett こそが Pink Floyd であり、Syd Barrett がサイケデリックの王者だと信じて疑わない私にとっては、この 2nd から先は完全に別のバンドであり、その意味で言えばプログレだと言われても疑問の余地を挟む必要はないといえばないのだろうけれども、じゃぁプログレってそもそもなんなのよっていう話になり、ジャズやクラシックを基調としたテクニカルなロックをプログレというならばこのバンドはそれには当てはまらないし、更に突き進めれば 2nd 以降に通底されており、この 2nd の邦題でもある「神秘」性であったり幻想的で長大な楽曲構成(それをクラシックに対比するのはちょっと問題がありそう)であったりをロックの「進化」系であると捉えるのならば、それがいいか悪いかは全く無視した上で「そうかもね」っていう程度でしかなく、かえってこのようなジャンル分けはあんまりどうでもよくなってしまうような気がします。

それでも辛うじて 1st の残り香を持ちつつ、たとえ本人の楽曲であったとしても Barrett 抜きのバンドの態勢でサイケデリックをやり続けようとするのは不思議な感じであり、暗中模索なのだろうなというのが手にとるようにわかるし、実際問題内容は決して悪くない。 それでも、これ以降の音楽性とは相当に開きがあることを確認しておかないと聴いている此方側が不安定になってしまいそう。

ちなみに、よくあるバンドの評価としての「フロイド風」とか「フロイドっぽい」っていうのは、残念ながら 1st の狂ったような Barrett 成分を指すのではなく、これ以降の大作志向な幻想性であることを、私は悪くは思わない。 「あぁ、*****は原子心母みたいだな」って妙なハマりかたに快感を覚えるくらいです。

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