書籍

関東大震災(吉村昭)

大正12年9月1日、午前11時58分、大激震が関東地方を襲った。建物の倒壊、直後に発生した大火災は東京・横浜を包囲し、夥しい死者を出した。さらに、未曽有の天災は人心の混乱を呼び、様々な流言が飛び交って深刻な社会事件を誘発していく―。二十万の命を奪った大災害を克明に描きだした菊池寛賞受賞作。

初版は1973年だそうで、私が読んだのは文庫化された1977年版。 なのでこの新装版のことはわからないけれど、よっぽど内容は同じであろう。

阪神淡路大震災や東日本大震災じゃなく、なぜ関東大震災なのかと言えば、ここにこの書籍があったからであり、他のであればそれを読んでいたのではありますが、今の若い人はさておき、私が子供の頃は近所の年寄りが関東大震災に遭っているくらいの時代だったんで、私もあれこれとは聞きまして。 当時私は足立区に住んでまして、比較的新興の住宅地だったんで(昔は空き地がたくさんあったけど、最近ストリートビューで確認しますってぇとみっちり家が建てこんであった)、地区以外からの流入者が多かったんですよね。 うちの父も文京区やら台東区からの流入だったし、近所の人もやれ千代田区やらなんやらからやってきたという話で。

それにしたって話を聞いたのが1973年だったとしても、関東大震災は1923年とのことなんで、その当時にしたって50年も経過してるんでありまして。 近所の年寄りはほんとに年寄りだったんだなぁって思うところではあります。 そっから更に40年経ってるもんね、今や。

関東大震災といえば被服廠跡(現在の東京都慰霊堂)で最大の死亡者を数えたとのことですが、聞き話にそういうのは含まれておらず、すごい地震でねぇ、火事でねぇっていうところだったんですよね。 あんまり話したくないっていう空気は確かにあった。 訊かれたからしょうがなく話す、みたいな。

それよりも興味深いと申しましょうか、そもそも期待して読み進めたのが、流言による朝鮮人・社会主義者の虐殺のくだりでありまして、かなり詳しく書かれてます。 なんとも凄惨な内容ではありまして、とくにここに書くことは憚られるんですけど、あのー。

流言といえば、今やインターネット時代なんで、立った流言もすぐに裏付けが行われて沈静化するという、そのスパンが恐ろしく短くなってるんですけど、昔はそういうのはなかったですよねぇ。 どういうわけか噂がやってきて、瞬く間に広がって、案外しつこく漂ってる、と。 大震災の話の中ですが、ほら、口裂け女とかね。 あぁいうの。

私が触れた最後の流言らしい流言は、金町浄水場に毒薬が入れられるというもので、ちょうど松本智津夫という人が逮捕されるだかされただかっていう頃で、足立区やら葛飾区というところは不気味な空気がありまして、どっから仕入れてきたんだかそんな流言が広まって・・・いや、どこまで広まったかは知らない・・・とりあえずウチでは湯船に新しく水を張って、なんかの時に備えようとしたもんでした。

流言は結局は流言でありまして、それは私の周りの話で、大震災のそれと比べることはできないのですけれども、あのなんというか不安というかなんというか、不気味な空気っていうのはヤですよねぇ。

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