乗物図鑑

1972年デビュー曲「赤色エレジー」によって、突然の大ヒット渦中に登場した、あがた森魚。アルバム『乙女の儚夢』『噫無情』『日本少年』『君のこと好きなんだ』と制作した後、大きな転換期を迎える。次なる「ヴァージンVS」を結成するまでの期間に、大阪のヴァニティ・レコードの阿木譲氏よりアルバム制作の話があり、大阪のスタジオに2日間こもって録音されたアルバムがこの『乗物図鑑』である。
あがた森魚の新しい局面を希求する初期衝動のほとばしりが、ピュアなまま、熱を持って収録されている。
このアルバムには、あがた森魚が敬愛する稲垣足穂のスピリットが凝縮されており、実際、「音」の美術家・藤本由紀夫氏による、稲垣足穂の肉声をモチーフにした作品とのコラージュが試みられている。モリオ・タルホ・コスモロジー的結晶の1枚。「サブマリン」ではPHEWがコーラスで参加。LPでの再発リリースが1986年にあったが、今回が初のCDリリースになる。

私がヴァージンVSのファンになった頃、A児というボーカルの人とあがた森魚が一致せず、元々あがた森魚を知っていたにも関わらず、「このA児って人はあがた森魚に似ているなぁ」等とは全然考えもせず、もう散々っていうか、ダマされたような、詐欺じゃないか!?みたいな憤りもあったもんだよぅ(懐古)。

現在はインターネットが素敵な時代ですもんで、YouTubeなんかで当時の映像が観られちゃったりなんかするもんだけども、昔はねぇ...まさかヴァージンVSが音楽番組に出てるなんて知らなかったものなんです。 貸レコード屋で「乗物デラックス」を借りてきて、テープにダビングして聴いていたら、あまりに聴きすぎてテープが伸びちゃった位で、その話をしたら親から買ってもらえてね、乗物デラックス。

そんな「乗物デラックス」。 そのアルバムでありコンセプトでありの前段階的アルバムがあったというニュースを知ったのは、「乗物図鑑」の再発の時なんでありました。 調べてみたら再発は1986年なんだってね。 オリジナル(1980年)は300枚だか400枚だかのウルトラレアであり、マニア狂喜乱舞の再発だったそうであります。 その流れに乗って私も買ったんですけど、あぁいうのは当時はホントに(今で言う)情弱じゃぁ何も得られない、厳しい世界だったよね。

私は再発のでしか知らないし、今ではそのLPも手元に無いんでアレだけど、当時...それを買った頃は、あまりに素晴らしいジャケットに毎日毎日拝んでた程でした。 乗物は即ち未来であり、未来的な音であれば尚更素晴らしいし、それと「あがた森魚」というノスタルジーとの融合、そして稲垣足穂のコラージュ(エアプレインでの「コタックピコタックピ…」)...という、或る意味前時代的なアバンギャルドさが、あまりにあがた森魚っぽくて、正直申し上げるとヴァージンVSの作品よりもヴァージンVSらしいところであります。

ちなみに私はあがた森魚のファンでもあったんですよね。 あぁ懐かしいなぁ。