千のナイフ

78年、YMO結成以前に制作された坂本龍一のデビューアルバム。基本的には、シンセサイザーを駆使したピコピコ電子音で彩られたポップな現代音楽である。後の作品には感じられないフュージョン的な雰囲気があり、独特の魅力を備えたアルバムとして人気がある。

私が所有している盤はなんと1984年プレスのもので、価格が3500円っていうのも凄いですけれども、その後再発されたものはデジタルリマスターがなされているということで、ということは私の持っている盤はデジタルリマスターなんてされていないということで、なんと申しますか音質的には「そんなに良くない」のかも知れません。

が、あんまりそういうのを気にしたことが無いので、どうでもいいっちゃどうでもいい。

昔(LPの頃)こういうのを好んで聴いていたんですけれども、今、この2009年に改めて聴くと、随分と違う印象を受けるので驚いてしまいます。

いきなりボコーダーで毛沢東の詞を朗読するっていう、この時点でこの作品の「ありかた」が決定していると思います。 何が言いたいのかよくわからない自虐的なスリーブの文章とあいまって、混沌とした未完成の荒削りな感情と、いかにも芸大を出た左寄りな人って感じの構成と。

こういうのが昔の私は好きだったのかぁ...と考えると、椅子からズリ落ちんばかりに憮然としちゃう(笑)。 背伸びしたい年頃だったのかねぇ。

ただ、そういう表面的な事は全部捨て去って、純粋な気持ちでこの作品に立ち向かうと、あら不思議。 いいんですよ今聴いても。 内容の振り幅が広いだけでね。