2022 年に 92 歳で亡くなった Elza Soares は 2016 年のリオ五輪の閉会式で歌ったそうで、前者は知ってたけど後者は知りませんでした。 でも、そのくらいに重要なサンバ歌手で、生い立ちとかいろいろがドラマチックすぎて枚挙にいとまがないくらいなので Wikipedia を読んでいただくとして、私にとっての Elza Soares でありますけれども、João de Aquino とのライブ盤(2021 年リリース)なんかかなりいいなぁと思いつつも実際最近のはそれほど聴いておらず、好んで聴くのは Tapecar に移籍してからくらいまでで、特に好きなのは Odeon 期。 となるので 1973 年のセルフタイトルくらいまでかしら。
ブラジル国内の政治的な問題があってイタリアで過ごしていた彼女が帰国して放った Elza Pede Passagem (1972) がヒットしたことを受けて、ここから本作ならびに前述のセルフタイトルまでが Odeon からのリリースなので、Oden 後期(末期)となるのでしょうが、Odeon との軋轢が結果としてよいアルバムを生んだのではないかと思うところ。 特に本作は Roberto Ribeiro とのデュエット作。 Roberto Ribeiro を参加させるのを渋ったのを受けて自身の進退をかけたっていう姉御肌っぷりがすごい話でありますが、見るからに姉御って感じですもんね。 何をか況やって話ですよ。
で、ここからがちょっとややこしいんですが、このアルバム Sangue, Suor E Raça はこれはこれでとてもいいんですけど、オリジナルは(メドレーをまとめて計算するとして)収録曲数が 10 なんですよね。 でも配信のは 14 曲だと。 そしてオリジナルアルバムというかアルバム単体で CD 化されたことはありませんので、この収録体制のなにががあるっていうことで、それが Negra っていうボックスセットなんです。 この 12 枚組のボックスは 1960 年リリースのデビューアルバムからずらずらずらと主だったアルバムを入れられるだけ詰め込んで、しかもボーナストラックとしてシングル盤が収録されていたりしてるんです。 で、そのシングルがやたらによかったりなんかでボートラ万々歳なわけです。
本作 Sangue, Suor E Raça のボーナストラックは 、ちょっと時代が遡って 1969 年リリースの 33 回転シングル盤「Bis / Sorris De Mim / Água E Fogo / Irmã Da Tristeza」です。 どれもいい曲なんですけど、このなかの Sorris De Mim という Mauro Duarte / Walter Nunes の手による隠れた名曲サンバがすっごくいいんですよ! この曲、おなじくブラジルの歌手さんが Mauro Duarte といっしょに「知る人ぞ知るマイナーなサンバ名曲」集をリリースされているらしく、探している私なんではあります(そのテイクは聴いたことがある)。 いやぁこれはサンバ沼だとなぁって戦々恐々とし始めた私なのではございました。