妖談うしろ猫—耳袋秘帖

「赤鬼」の綽名を持つ、南町奉行根岸肥前守のもとに、商いの評判が良かったもろこし屋の主人、幸右衛門が殺されたとの知らせが寄せられる。現場近くでは、 「かのち」という書き付けを残して失踪した大店の若旦那が目撃されるが…。奇談集「耳袋」を記した根岸肥前守が、江戸の怪事件を解き明かす好評シリーズ、 新展開の第一巻。

届いていきなり読み始めたので困惑してしまいました。 どうも雰囲気が違う。 よそよそしさが目立つのです。

そしたらこの巻から出版社・・・いや「版元」・・・が変わったんですね。 版元が変わったのと同時に、根岸鎮衛をとりまく部下二人が変更になって、その説明が挿入されています。 違和感はここにあったようです。 それが以外はそのまま。 でもここに違和感をおぼえる程に、あの二人の存在感が強かったのだと改めておもったところ。

こういう登場人物の差し替えが版元の変更に伴なうものなのかどうかはさておき、差し替えが随分と作風をリフレッシュさせるものだと驚かされたものです。 風野作品は毎回「驚かされる」ところですが、今回の作品での最大のそれは、差し替えだったのかも知れません。

それはさておき、風野ファンはこの作品をどう読むのでしょう。 前回に引き続きテンションが低いとか、大した盛り上がりも無く・・・等と感じるのでしょうか。

私は読了してふと表紙を眺めつつ思ったのですけども、きっとこれも1巻目も、面白さは変わらないんじゃないでしょうか。 受け止める(読む)こちら側が変化しただけなんじゃないか、と。

巻を追う毎に読者は贅沢になり、更に更にと得体の知らない「面白さ」などを求め、それがエスカレートして沸点に達した時、その本の本来の面白さを棚にあげて「つまらなくなった」と感ずるのではないか、と思ったんです。

本は焦らず急がず、欲しくて買った本なら尚更、楽しもう、何かを得ようと貪欲に向きあおうと思った 吉宗であった 私でした。