Colours (Eloy)


どっちつかずというのか、Eloyというバンドの楽曲を聴くといつもそう感じる。 このジャーマンなバンドはプログレといえばいいのかハードロック(ヘヴィーロック)といえばいいのか。 少なくとも私が好きなのは1971年リリースの1stから10年、いつのまにかメンバーも代わって新体制で臨んだこの9thでありますところの「Colours」が、前作から飛躍してシンセとかシーケンサーとか使ってやけにポップにわかりやすいスペースロックになったからであります。

ただ、これ以降のは聴いたことがなく、果たしてこのままスペース系で押し切ってしまったのか、ご多分に漏れずまたほかのジャンルをつまみ食いしているのか、わからないところではあります。 というのも私にとってのジャーマン系は「1980年以降はない」としているところでして、あーなんというかすいません。

なお、中心人物の Frank Bornemann はヘビメタ系のプロデューサーとして後年著名になるのだそうですけど、こっち方面は疎いので知りません。

暗殺春秋(半村良)


研ぎ師の勝蔵は剣の師匠・奥山孫右衛門に見込まれ暗殺者の裏稼業を持つようになる。九寸五分の匕首で次々に悪党を消していく中で、次第に現れる闇の権力者・大御所一橋治済の影。治済と老中・青山忠裕の陰の争いに巻き込まれていく勝蔵もまた、いつしか殺しの悦楽にはまり、のっぴきならなくなっていく…。

半村良は好きだけど、時代物が少ない。 江戸群盗伝くらいしかない、とお嘆きの諸兄、ありますここに、暗殺物が。

半村良のいいのは台詞回しで、余韻がとても気持ちいんです。 特に女性の。 今回も主人公勝蔵の妻、おけいの台詞回しがいいんでして、こういったところを読みたいから半村良を読むのでありまして、あの・・・申し訳ないんですけどあんまりSFものとかは食指が伸びない・・・

相変わらず話のテンポもよくて、あっというまに読めちゃうのもいいですし、じっくり読むと意外に(といっては失礼か)読み応えもある。 不思議な作家さんですよねぇ。

このお話でも一橋がそうとうなワルにされてますけど、ここ数エントリーにわたって申し上げている「ワルとされる人もその人側からみればそんなことはない」説を念頭に読んでみると、味わい深いもんです。

大老 井伊直弼(羽生 道英)


一生部屋住みとして暮らすか、それとも他家の養子になるか。不遇の日々、学問に傾倒する井伊直弼に突如、転機が訪れた。井伊家世子の死で藩主である兄・直亮の養子になった直弼は、兄の死後、彦根三十五万石を継ぐ。開国に向けて動く直弼は、幕府の期待を担って大老に就任、専制政治を行う。やがて強権的に断行した。「安政の大獄」の反発で尊攘派の怨嗟が…。

この羽生道英という作家さんは伝記物が得意なのかしら。 とそれはさておき、前のエントリーで田沼意次がいい人にされたりわるい人にされたり(極悪人になったり)散々だということを書いたのですけれども、その面で見れば井伊直弼という人もなかなかに散々な言われよう、というか悪い政治家だとされているんですよね。

前に彦根に行ったおりに、地元ではそんなことがないと悪評を払拭したところでありまして、そういったところで考えると吉良上野介なんかもそうらしいですけど、こういった「実は悪い人ではない」的な話を読むのが私は好き。

事実がどうだかはわかりませんけど、この書籍では恨みを買うようなことはすべて長野主膳におしつけることで「なおすけわるくない」ことにしていますけど、存外そういうものかもしれませんしね、話は話としてこれでもいいのかなって思うんですよね。

江戸幕府 最後の改革(高任 和夫)


飢饉や大地震が続き、危機的な経済状況にある天明期の江戸幕府。足軽の子と蔑まれつつ、経済手腕を買われて老中に出世した田沼意次と、借財に喘ぐ下級武士でありながら、狂歌師として、自由な「サラリーマン」生活を謳歌する大田南畝。二人の生き様から、企業人としての武士の懊悩を描いた、本格時代小説。

同じ江戸時代の同じ時期の武士といえどもその格の差で会うこともないだろう2人の主人公をそれぞれの側から話を進めさせ、最後は対面して終わるという、すごく簡単に書くとそうなるんですが、この文庫本で400ページほどのお話をたいへん興味深く読了。

正直私は太田南畝という人を知らず、この書籍を読み進めてみてもさほどに興味を持てなかった。 ですが、話によって善にも悪にも(極悪にも)なる田沼意次が今回はどうなるんでしょう?っていう興味だけで読み始めたところでありまして、だんだんに運のめぐりが悪くなり、息子が死んで自分も没落していくさまが、こう、毎回どんな話を読んでもぐっとくるんでありますなぁ。 っていうかよかった頃のままで終わるのって剣客商売くらいしか知らないぞぅ。

国書偽造(鈴木輝一郎)


時は寛永八年、徳川家光の時代である。対朝鮮外交を一手に握る対馬藩の家老、柳川調興が突然、所領の返還を申し出た。調興の訴えは幕府を揺るがす一大スキャンダルに発展していく。朝鮮王と徳川将軍の間で交わされた国書が対馬藩の中で偽造されたり改竄されたりしていたというのは本当か。そして調興の真意は一体何なのか。…史実を基に大胆な発想で描く時代法延ミステリー。

対馬というのはどこだ、というくらいに東日本というか関東甲信越というか東京か長野県でしか暮らしたことのない私にとって西日本、とくに九州なんていうのは一度は行ってみたいところであるし、その割にはきっと、対馬へは行くことがないだろうなぁと思ったりではあります。

そんな対馬であったお話。 ということで事前知識なく読み始めたのですけれども、いやぁこれが本当ならば江戸時代というのも最初の頃はいろんな人がいたんだなぁと思って。 その実ほんとうにあった話だそうで、「柳川調興」で調べると実在の人で、粗筋のだいたいは事実だったそうで、あたしゃ椅子からずり落ちましたわよ。