ライフゲイムの宇宙

我々がモノを数えるときに使う数、この自然数を定義するにはどうするか? 自然数のリストを作る? それは不可能に近い。自然数は次のように定義される。「i.1は自然数である」「ii.自然数に1を加えたものは自然数である」「iii. i.とii.によって定義されるもののみが自然数である」 これにより自然数1から自然数2がつくられ、2から3と順繰りに無限個の自然数が定義される。このように矛盾なき循環的な定義は再帰的な(recursive)定義とよばれる。この再帰的な定義は強力で、有限の規則から無限の空間を生成することができる。

原著タイトルの『The recursive universe』が示すとおり、本書では再帰的な定義から生成される空間を通し生命、情報、熱力学、自己組織化などを考える。本書で扱われる再帰的な定義はライフゲイムと呼ばれ、直観的には碁盤上での碁石の並べ替えで定義される。ある碁石の近傍に一定以上の碁石があればなにもせず、一定以上の碁石がなければその碁石を取り去る、ただこれだけである.しかし、この単純な定義から驚くほど多様な空間が生成されるのである。

ライフゲイムは1970年のサイエンティフィックアメリカン誌上で紹介されるや大流行し、タイム誌(1974年)が「ライフゲイムの大群が数百万ドルの貴重な計算機資源を浪費している」と苦言を呈するほどであった。ライフゲイムに関する日本語の成書は極めて少なく、本書も品切れが続いていたのだがこのたび待望の新装版が出版された。本書が書かれた1985年(日本語版1990年)のあと、計算機は飛躍的に高速大容量化し、人工生命がブームとなりヒトゲノムが決定された。改めて読み直してみると内容は隔世の感がぬぐえない。新装版は内容についてはまったく手直しがされておらず、フェルマーの定理が未だに未解決の問題となっていたりする。もう少し内容も「新装」しても良かったのではあるまいか。

それでも、やはりライフゲイムは面白い。インターネットを探せばCGIやプログラムが見つかるし、自分でプログラムを書いてもよい。本書を片手にライフゲイムの宇宙を探索されてみてはいかがだろうか?

昔々、TV’s TVというフジテレビで放送した単発の番組があって、その中でライフゲームを見たのが最初だったかも知れない。 っていうかTV’s TVですらWikipediaにあった。 その52番めのやつですね。

で、こないだフォン・ノイマン関連の本を読んだおり、ライフゲームについての記述がありまして、あぁ懐かしいねなんて、ライフゲーム懐かしいねなんて、あれってどういう仕組みでできてるんだろうなんて、ググってみましたら呆気なくわかっちゃったりして、TV’s TVの頃と時代は変わったなぁなんて思ったものですよ。 ってそりゃそうだ、26年も経ってんだもん。 インターネットも普及してるっちゅうの。

で、よせばいいのにこの高い本を買って読んだんですよ。 しかもこのこだわりにこだわりぬいた翻訳表記。 読みやすいんだか読みにくいんだかわかんねーところながら、内容的には非常に興味深く、もちろんライフゲームの専門書ではなくて「再帰的な宇宙」という原著タイトルにあるとおり、ライフゲームを基にしていろいろなトピックを紹介する体裁。 案外にライフゲームについては語るところ少ないんじゃね?と思ったんですけどさにあらず。

ただこれ、値段が高すぎる。 ライフゲームを作ってみたいと考える奇特なお方にしかお薦めできないのでありますよ? ちなみにiPhoneアプリだったらsssLifeっていうのがありますね、と申し伝えておいたりおかなかったりです。