トロピカリア
1960年代半ばのブラジル音楽界は国粋主義的政治色に支配され、過剰なまでの保守化やマンネリ化が進んでいました。そんな中で、カエターノ・ヴェローゾ、ジルベルト・ジル、ガル・コスタらを中心とする若手ミュージシャンたちは、ブラジル音楽の特質を活かしながら、ロックなど海外の音楽を取り入れることで停滞気味な音楽シーンの体質を変えようとしていました
しょっぱなのカエターノの絶望感がこの本の全てのような気がします。 音楽的充実はもしかしたらジルベルト・ジルに秀でていたのかも知れませんが、その対比を鮮やかに浮き出しているのがP16,17の両者の写真。 左のカエターノは、いかにも亡命者っぽい亡命者の出で立ちで、その絶望感、焦燥感、憂鬱感そして望郷の想いが、ダイレクトに写真に滲み出されていて、観ている側に重い空気を吐き出しています。
トロピカリズモはそれ自体、音楽的芸術的な形を表しているのではなく、もっとカウンター的な行動指針のようなものだったそう。 かと言え無論、例えば国粋主義打破を目指すのではなく、流入した外国の(ビートルズ)音楽を正当に評価し、自分達の音楽に汲み入れるという今から見れば当たり前過ぎるアクションを示したのではありましたが、ブラジルの国粋主義は本当にダイレクトな凄さがあったらしく、先ず、エレキを導入する事すら観客レベルで拒絶されてんだから...。
ロック(イエ・イエ・イエ)もダメだったんだから。
拒絶反応は観客レベルのみに留まらず、政治介入した軍レベルにも達し、逮捕拘留され、揚げ句の果てには追放(亡命)処分にまで発展してしまう、ブラジルという国の当時の全体主義の恐ろしさがまざまざと伝わってきます。
あ、でもね、写真も沢山載ってるし、カエターノのアイドルちっくなポーズの写真とかあるし、なかなか読み応え、見応えがありますよ、これ。 デデが可愛らしいって事もよく分かったし、これは買って良かったなぁ。
とは言えファン以外にはアピールしなさそうだけどね、この本は。





- link -